1998年夏 アシナガバチ観察日記6月末頃 マンションのベランダにアシナガバチの巣を発見。ハチは4匹いた。小さいながらけっこう恐い。追い払う方法がないか検討しつつ、とりあえず遠くから写真を撮ってみた。 ![]() 7月4日 対処の方法をインターネットで探してみたけど、「夜のうちに市販の殺虫剤で駆除」といった全滅作戦しか見つからず、それもなんだか可哀相なので、今年の夏はハチと同居することにした。巣は少し大きくなっていた。
7月9日 ハチについていろいろ調べる。アシナガバチが人を刺すのは巣に危害を加えられたときで、ハチから人を襲いに行くことはない、とのこと。かなり近づいて写真が撮れるようになった。 ![]() 7月11日 毎日ハチの巣を見るのが楽しみになってきた。ハチの種類は「コアシナガバチ」であることが判明。 写真は巣の裏側。ベランダの壁とは1本の支柱で固定されている。巣が大きくなるにつれて支柱への荷重が大きくなるため、支柱部分を補強してるようだ。
7月12日 ハチの数もかなり増えてきた。20匹近い成虫が、巣を拡張したり幼虫の世話をしたりしている。 ![]() 7月20日 ハチさん総出の作業風景。巣はまず底の部分が作られ、そこに女王が産卵し、幼虫の成長に合わせて部屋の壁が伸ばされて行く。
7月26日 先端部分のアップ。卵が産み付けられているのが見える。
7月27日 幼虫の世話をする成虫。ほほえましい光景。
8月1日 左端あたりの部屋に注目。半透明の白い膜の中で、幼虫が繭を作っている。最初、幼虫が部屋から落ちそうになりつつ体を動かしているのを見たときは、「どうしたんだろう。暑いのかなあ」と思ったりしたが、糸を吐いて繭を作っているところだった。この中で蛹になる。
8月4日 巣の全景。立派な繭がたくさんできている。右の方にいる淡い色のハチは、羽化したばかりの成虫だろうか。
8月13日 すくすくと成長する幼虫達。「こんなにたくさん子供を作って、巣作りが間に合うんだろうか」とか、妙な心配をしてみたり。 成虫から給餌される幼虫が部屋から身を乗り出し、食べおわると部屋に引っ込むのがかわいい。
8月16日 整然と並んだ幼虫と繭。繭の数はかなり多くなったけど、穴が開いて羽化した様子が見える繭は少ないのが気がかり。ちゃんと成長してるんだろうか。
8月19日 番外編。鉢植えのイタリアンバジルの葉っぱが丸坊主になっていたのに驚き、よく見ると一匹の青虫が育っていた。アシナガバチの巣から3m程度しか離れていないのに、よくここまでハチに見つからずに成長できたもんだ。と感心してたら、翌日には姿が見えなくなっていた。食べ物がなくなったのでどこかに移動したのか、ハチの餌になってしまったのか。
8月21日 繭の口がほとんど開いている。一斉に羽化したようだ。良かった良かった。
8月22日 幼虫が糸を吐いて繭を作り始めたところ。まだ繭は半透明。
スズメバチはどこかへ飛び去ったが、しばらくするとまた戻ってきて殺戮を始めた。夕方までに数回の襲来を受ける。
8月23日 目が覚めるなり気になって巣を見ると、また来てたよスズメバチさん。しくしく。成虫はどこかに逃げたのだろうか。閑散とした巣から幼虫をひきずり出しているショッキングな1枚。
8月25日 24日の朝にもスズメバチが来ていた。 たまに1〜2匹の成虫が戻って来て世話をしているが、残っている幼虫が連れ去られるのも時間の問題だろうか。
8月26日 ときどき戻って来きては世話をする成虫。 以前はかなり近づいて写真を撮っても気にする風ではなかったが、カメラを向けると威嚇するかのように羽を広げてにらみ付けられた。淋しい。
9月1日 もう、いつ見ても成虫の姿を見かけることはなくなった。巣は放棄されたようだ。水やりの時に刺されないようにと、巣の発見直後に移動した観葉植物を元の位置に戻す。 成虫たちは今頃どこで何をしているのだろうか。
といった経過で、うちに巣をかけたアシナガバチの夏は終わった。 巣を発見した当初は「えらいことになったなー」と思ったのだが、実際に付き合ってみると刺されることもなく、友好的(?)に過ごすことができた。成虫がどこからともなく青虫団子を抱えて戻ってきて幼虫の世話をする光景はとても微笑ましく、見ていて飽きることがない。「みんな元気に育って欲しいなあ」といった気分になるから不思議なものだ。 それだけにスズメバチの襲来はショックだった。なんとかして撃退したかったのだが、スズメバチだけを駆逐する方法がわからない。へたに手を出すと刺されるだろうし、巣は細い支柱で固定されているから衝撃を加えると巣ごと落ちてしまいそうだし、まさか薬を撒くわけにもいかない。ただ、おろおろしながら見守るしかなかった。 初夏に作り始めるアシナガバチの巣は、新たな女王が巣立つ晩秋までの間に、半分以上が何らかの理由で放棄されるらしい。餌になる虫が少ない、病気やカビや寄生虫にやられる、そしてスズメバチの襲撃を受ける、といったことの方が多いからだ。それならむしろ自然なことなのだろう。スズメバチにはスズメバチの生活があるわけだし。 けれど、成長を見守ってきた巣が目の前で襲われ、すっかり空き家になってしまうのを見るのはやはり本当に辛いことで、「アシナガバチ、いなくなっちゃったね」と妻に告げた時は不覚にも涙がこぼれそうになった。 洗濯物は思うように干せず、網戸も開けられない不自由な夏だった。巣はエアコンの室外機のすぐ近くにあり、エアコンを付けると熱風が吹き出すので、気にしながら使ったりもしたものだ。 しかし、目の当たりにした昆虫の生活はとても興味深く、おかげで蜂に関する本を何冊か読んだりもした。何もなければただ過ぎていく夏も、今年はアシナガバチのおかげで一味違うものになったような気がする。 このページに関するご意見・ご感想はこちらへ。 |